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	<title>ケース | 人としての器</title>
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	<lastBuildDate>Fri, 29 Aug 2025 07:11:23 +0000</lastBuildDate>
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	<title>ケース | 人としての器</title>
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	<item>
		<title>ケース：&#8221;相手のため&#8221;という「善意」がすれ違うとき</title>
		<link>https://h-utsuwa.com/case/goodwill</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[hanyu]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 29 Aug 2025 07:11:23 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[ケース]]></category>
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					<description><![CDATA[「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。 以下、あるプロジェクトの責任者Aさんと受託者Xさんとのやり取りをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。 ケース [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以下、あるプロジェクトの責任者Aさんと受託者Xさんとのやり取りをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">ケース：&#8221;相手のため&#8221;という善意がすれ違うとき</h6>



<p class="wp-block-paragraph">とある企業のマネージャーであるAさんは、外部の専門家であるXさんに、新サービスに関するクリエイティブな企画を依頼しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">3か月間のプロジェクトの前半戦が終わり、Xさんは専門性と誠実さをもって、初期の成果物を納品します。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「素晴らしい仕上がりですね。文句のつけようがありません！」</p>



<p class="wp-block-paragraph">Aさんからの満足そうなメッセージを受け取ったXさんは、安堵の息をつきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、その安堵は長くは続きませんでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●最初の綻び &#8211; 月曜日の夕方</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">プロジェクトが佳境を迎えたある月曜日の夕方、無事に二次成果物の納品も終わり、AさんはXさんに追加作業に関するメールを送信しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「お疲れさまです。今回の成果物も、とても良い仕上がりでした！ 社内でも評価が高く、さらにブラッシュアップしたうえで、ぜひともリリースに向けて進めていきたいと思います。<br>ただ、急で申し訳ないのですが、社内の統一ルールに合わせて全体を再調整していただければと思います。木曜日の社内会議で使用したいです」</p>



<p class="wp-block-paragraph">このときのAさんとしては、プロジェクトを成功に導くための、当然の協力依頼のつもりでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、メールを読んだXさんの頭の中で、いくつかの疑問が渦巻きます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（この作業は、最初の合意に入っていたかな？ 契約書を見直してみよう…やはり、明記されていない。しかも、このタイミングで全体を修正するには…大幅な手戻りになる。木曜日まであと3日しかない。なぜ最初から教えてくれなかったんだろう…？）</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんは、コーヒーを一口飲んで、一度深呼吸しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">感情的になることなく、長期的な関係のためにも、プロとして誠実に対応しようと心に決めます。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●プロフェッショナルの善意 &#8211; 火曜日の朝</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">翌朝、Xさんは、それがお互いのためになる最善の方法だと信じながら、慎重に言葉を選んで返信をします。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「いつもお世話になっております。ご連絡いただき、ありがとうございます。成果物にご満足いただけたとのこと、大変うれしく思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ご依頼いただいた御社の統一ルールへの再調整についてですが、こちらは当初のご契約内容には含まれていなかった作業かと存じます。大変恐縮ですが、今回は御社内でのご対応をご検討いただけますでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もし当方での対応をご希望の場合は、追加の作業となりますため、改めて作業範囲とスケジュールについてご相談させていただければ幸いです。」</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんは、送信ボタンを押す前に、何度も文面を読み返しました。（言葉遣いは丁寧だし、理由も明確。これでAさんにも理解してもらえるはずだ）</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、その後、予想外の反応が待っていました。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●想定外のすれ違い &#8211; 火曜日の夕方</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">同日の夕方、Aさんから返信が届きます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「ご連絡ありがとうございます。承知いたしました。本件、貴殿による対応が難しいようでしたら、私たちで引き取らせていただきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">また、今回の件について社内で議論した結果、Xさんのご意向次第では、今回の納品で一区切りとし、今後のご契約については一旦白紙で見直したほうがよいのでは…という意見も出ております。</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんとしては、今後も継続してお付き合いいただけるご意向はございますでしょうか？ 率直なお気持ちをお聞かせくださいますと幸いです。」</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんは画面を見つめたまま、しばらく動けませんでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（え？ なぜ急に白紙の話に？ 正当な主張をしただけなのに、もしかして、やる気がないと思われた…？ 相手のためを思ってプロとしての境界線を引いたつもりが、なぜ非協力的だと捉えられてしまうんだ？）</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●危険な分岐点 &#8211; 水曜日の朝</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">翌朝、Xさんは混乱した気持ちを整理しようと、返信を書き始めました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「正直に申し上げますと、昨日のご連絡には大変戸惑っております。私は依頼されたことを誠心誠意やってきたつもりですが、なぜ急に『白紙』ということが議題にあがったのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">『白紙』という言葉を向けられてしまうと、正直なところ、私としても『もう退いたほうがいいのかな』という気持ちになってしまいます。<br>勝手ながら、今後の判断については、一旦保留にさせていただけないでしょうか…」</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんは、このメールを書き終えた後、一度PCから離れました。（このままメールを送ったら、関係は本当に終わってしまうかもしれない。でも、どうしてこんなことになったんだろう…？）</p>



<p class="wp-block-paragraph">（以上、ケース終わり）</p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph">ここでいったん読み進めるのを止めて、XさんとAさんのそれぞれの視点から、何が起きていたのかについて、一度、ご自身で考えてみていただければ幸いです。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph">***</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">見えない心の動き &#8211; それぞれの「善意」の世界</h6>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Aさんの心の奥底にあったもの</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">実は、Aさんの依頼の背景には、上司からの強いプレッシャーがありました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">プロジェクトの責任者として、何としても成功させなければならない状況に追い込まれていたのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（Xさんは今まで素晴らしい仕事をしてくれた。きっと、この状況を理解し、チームとして助け合ってくれるはずだ。困難を乗り越えて良い成果を出すことは、きっとお互いのためになる。）</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、このとき、Aさんには見落としていた部分がありました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">まず、プロジェクト開始時に「社内の統一ルール」について説明していなかったこと、そして今回の依頼が契約範囲外の作業であることへの認識が薄かった点が挙げられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、大幅な修正を木曜日という3日後の期限で依頼するという、タイミングの問題もありました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">上司からのプレッシャーもあり、責任感の強いAさんは、Xさんの状況を十分に認識しないまま性急に対応を進めてしまいました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">その結果、Xさんからきた返信は、Aさんの期待を裏切るものとなってしまいます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（契約に含まれていないからできない…？ そんな堅いことを…。これまでの信頼関係は何だったの？ もしかして、Xさんはこのプロジェクトにそもそも乗り気じゃなかったのかしら？　だとしたら、無理に継続を頼むのはかえってXさんを追い込んでしまう。はっきりと意向を聞いて、もし辞めたいのなら、その選択肢を提示してあげるのが、私なりの優しさだ）</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、Aさんは、Xさんに対する善意のつもりで配慮し、「白紙」という選択肢を提示しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、この対応は、なぜ白紙という選択肢を提示する判断に至ったかの説明も不十分でなままで、Xさんからの正当な指摘に対する過剰で防衛的な対応だったと言えるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Xさんの心の中の葛藤</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">一方、Xさんの心の中では、過去の苦い経験が警鐘を鳴らしていました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（Aさんとは良い関係だ。だが、この種の曖昧な依頼を受け続けると、自分が疲弊してしまう。プロとしてきちんと線引きをすることが、健全で長期的な関係を守ることにつながる。毅然と対応して、こちらの背景を理解してもらうことは、今後の関係継続のためでもある）</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんもまた、健全な関係性を守るという「善意」から、プロフェッショナルとしての境界線を引きました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、振り返ってみると、Xさんにも改善の余地がありました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">契約時により詳細な要件確認を行い、「社内ルール」などの可能性について事前に質問していれば、この問題は予防できたかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">また、一方的に断るだけでなく、代替案や妥協案を積極的に提示するなど、相手の困った状況への配慮や支援の姿勢があれば、より建設的な解決につながっていたでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、その後のAさんからの「白紙」という言葉によって、Xさんの善意は根底から揺さぶられることになります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（なぜ、いきなり「白紙」なんだ？ こちらの都合を考えず、追加の要求をするAさんのほうこそ配慮が欠けているのでは…？ もしかして、むしろAさんのほうが関係を終わりにしたいのか？ こっちは良かれと思って境界線を引いたのに、すべて裏目に出てしまった…）</p>



<p class="wp-block-paragraph">最終的にXさんは感情的になり、「もう退いたほうがいいのかな」という消極的な表現で関係修復を困難にしようとしています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">プロとしての境界線を設けることはたしかに重要ですが、もう少し相手との関係継続に向けた歩み寄りの対話の継続を模索することはできたかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">なぜ「善意」は衝突するのか</h6>



<p class="wp-block-paragraph">このケースは、お互いの「善意が生んだ悲劇」とも言えるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">AさんもXさんも、それぞれが「相手のため」を思って行動しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それなのに、なぜ二人の心はすれ違ってしまったのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">その核心として、彼らの「善意」が、自分自身の「正しさ」という器の範囲内でしか機能していなかった点が考えられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">では、その「正しさ」は一体どこから生まれてくるのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">その構造を解き明かすために、彼らの心の奥深くを見つめていこうと思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph">まず、二人の行動の基盤となっている「正しさ」を整理してみます。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Xさんの正しさ：プロフェッショナルとしての誠実さ</strong></p>



<ul class="wp-block-list">
<li><strong>前提の世界</strong>： プロの関係は、明確な契約と境界線の上に成り立つべきだ。それによって互いの領域が尊重され、長期的な関係性を守ることにつながる。</li>



<li><strong>善意の行動</strong>： 契約外の作業は明確に断り、対等で持続可能な関係を維持しようとする。</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Aさんの正しさ：チームとしての結束</strong></p>



<ul class="wp-block-list">
<li><strong>前提の世界</strong>： 良い関係とは、契約を超えて自主的に助け合うチームワークで成り立つべきだ。</li>



<li><strong>善意の行動</strong>： 乗り気でない相手には、関係を清算する選択肢を「配慮」として提示するのが優しさだ。</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph">このように、二人は異なる「正しさ」の世界に生きています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、その正しさの根源を考えてみると、表面的な感情の下に隠された、より深い心の領域が見えてきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">心の階層 &#8211; 行動の裏にある自己防衛</h6>



<p class="wp-block-paragraph">さらに彼らの心を、表面から深層へと掘り下げていきましょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Xさんの心の階層</strong></p>



<ul class="wp-block-list">
<li><strong>表面（困惑）</strong>：「なぜ契約外の依頼を、このタイミングでしてくるのか」</li>



<li><strong>中間（不安）</strong>：「このままでは、自分の領域を侵されてしまう」</li>



<li><strong>深層（恐怖）</strong>：「また都合よく利用され、搾取されるのではないか」</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Aさんの心の階層</strong></p>



<ul class="wp-block-list">
<li><strong>表面（困惑）</strong>：「なぜこの大事な局面で、前向きに協力してくれないのか」</li>



<li><strong>中間（不安）</strong>：「チームとしての信頼を裏切られれば、プロジェクトが頓挫してしまいかねない」</li>



<li><strong>深層（恐怖）</strong>：「責任のある立場で自らの落ち度を認めたくないし、勝手に期待して、これ以上傷つくことから逃れたい」</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph">興味深いことに、両者の行動原理は、深層にある『恐怖』や『不安』に対する自己防衛に根差しています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">Xさんの「搾取される恐怖」は、自らの専門性という聖域を守るための『境界線の正しさ』を生み出しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">一方、Aさんの「傷つけられる恐怖」は、&#8221;チームの信頼&#8221;という理想が崩れる前に、自ら関係をリセットしようとする『配慮という名の正しさ』を形成しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、自己防衛から生まれた異なる二つの「正しさ」が、&#8221;善意&#8221;という仮面をつけて、最終的に互いを傷つけ合う結果を招きました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">深層にある恐怖や不安に気づかぬまま、自分が「正しい」と信じて取った善意の行動が、皮肉にも、相手との関係性を脅かす原因となる――ここに問題の根深い構造があります。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">実践的な振り返り：より良い関係を築くために</h6>



<p class="wp-block-paragraph">あらためて、このケースを実践的な観点で振り返り、今後の対応としての学びを整理します。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Xさんにとっての学び</strong></p>



<ol class="wp-block-list">
<li><strong>予防的なコミュニケーション</strong><br>・契約時に、より詳細な要件確認を行い、想定される追加作業について議論する<br>・「社内ルール」などの可能性について事前に質問する</li>



<li><strong>建設的な問題解決</strong><br>・依頼を一方的に断るだけでなく、代替案や妥協案を積極的に提示する<br>・相手の困った状況に対する配慮や支援の姿勢を示す</li>



<li><strong>関係継続への配慮</strong><br>・プロとしての境界線を保ちながらも、長期的な関係構築への工夫を忘れない<br>・Win-Winを模索する姿勢を持ち、今後の関係継続への意志を明確に伝える</li>
</ol>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>●Aさんにとっての学び</strong></p>



<ol class="wp-block-list">
<li><strong>初期設定の重要性</strong><br>・契約時に「社内ルール」などの重要な制約条件は、あらかじめ洗い出して開示する<br>・プロジェクト要件を詳細に定義し、後から重要な条件を追加しないよう準備する</li>



<li><strong>現実的なスケジューリング</strong><br>・大幅な修正が必要な場合は、十分な期間を設ける<br>・契約外の作業であることを理解し、追加のコストや工数を配慮したうえで提示する</li>



<li><strong>建設的なコミュニケーション</strong><br>・正当な指摘に対して、まずは相手の立場や背景を理解しようと努める<br>・コミュニケーションを簡略化せずに、依頼の意図や背景を明確に伝える労力を惜しまない<br>・即座に極端な反応（「白紙見直しの提案」など）をせず、お互いの意図を対面でじっくり話し合う機会を設けるなどして、段階的に解決策を模索する</li>
</ol>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">まとめ</h6>



<p class="wp-block-paragraph">本ケースのAさん・Xさんは、それぞれ自分なりの正しさと善意を持って、相手に向き合っていたことは疑いありません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただ、それがどれほど誠実であっても、人と人が関わる中では、思いがけない&#8221;すれ違い&#8221;が発生してしまうものです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そうであるならば、むしろ、すれ違った時にこそ、器の成長に目を向ける契機として捉え直す必要があります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">このケースは、私たちに重要な問いを投げかけます。</p>



<ul class="wp-block-list">
<li>なぜ、私たちはこれほどまでに「自分の正しさ」に執着してしまうのでしょうか？</li>



<li>その際、深層に隠れている自己防衛の動機に気づくことができるでしょうか？</li>



<li>そして、本当の「器」とは、一体、何を包み込むことでしょうか？――それは、単に表面的に、相手を傷つけないようなコミュニケーションの技術を身につけることではないでしょう。</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">今回のケースの場合、AさんとXさんがこれからの「器」を育てるために、まず自分の「善意」や「正しさ」が、誰かを傷つけうるかもしれないという事実を引き受けることが出発点です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、その正しさが、自分自身のどんな「不安」や「恐怖」から来ているのかを、冷静に見つめる勇気を持つ必要があります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">その上で、自分の中にある複雑さを認め、相手の中にも同じような複雑さがあることを想像してみることが求められます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">自分の「器」の限界を自覚し、その脆さや歪みさえも受け入れた上で、それでも、なおその縁を超えて相手の世界に手を伸ばそうと試み続ける意志を持つ――この姿勢こそが、真に深い関係を育むことにつながっていきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">今日、誰かとの関係で小さなすれ違いを感じたとしたら、それは相手を責める材料ではなく、あなたの「正しさ」と、その奥にある「不安」や「恐怖」の輪郭を教えてくれるサインかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そのとき、「なぜ私はこう感じるのだろう？」と心の奥を見つめると同時に、こう問いかけてみてはいかがでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「相手は、どんな“不安・恐怖”を抱え、どんな“正しさ”の世界で、私のためを思い、私たちのためを思ってくれているのだろう？」</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこに完璧な正解があるわけではありませんし、一生懸命に向き合っても、時には傷つけあう結果になるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、たとえ傷つけ合ったとしても、その痛みの中から再び相手を理解しようと何度も手を伸ばしていく――その絶え間ない関係構築のプロセスこそが尊いものであるように思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>
]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>ケース：部下指導の場面でのマネージャーAの器</title>
		<link>https://h-utsuwa.com/case/manager-a3</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[hanyu]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 27 Sep 2023 00:53:31 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[ケース]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://h-utsuwa.com/?p=956</guid>

					<description><![CDATA[「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。 以下、部下指導の場面でのマネージャーAのふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。 ケース：部下指導の場 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以下、部下指導の場面でのマネージャーAのふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。</p>



<h6 class="wp-block-heading">ケース：部下指導の場面でのマネージャーAのふるまい</h6>



<p class="wp-block-paragraph">【状況】</p>



<p class="wp-block-paragraph">ある企業においてマネージャーAは、3人の部下を持っています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">30代前半の部下Xは、先月、調査研究グループからサービス開発グループに異動してきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この日、部下Xが、初めて自分で企画した顧客向けの研修コンテンツのプレゼン資料をマネージャーAのもとに持ってきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下Xを管理職候補として自律的に組織・チームをリードする人材に育てたいと考えています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、部下Xは、どこか他者依存で、上司（マネージャーA）に言われたことばかりをやっており、淡々と仕事もこなす感じにも見受けられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下が自らビジョンを描いたり、積極的に提案したり、率先して周りを巻き込む姿勢を持たないことに課題意識を持っています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">一方、マネージャーA自身は、部下育成に関して独自にコーチングやクリティカルシンキングを学び、日常的にスキルを高めてきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこで、マネージャーAはこれまで自分で学んできたことを実践しようと、部下Xにフィードバックを行う時間をつくり、研修コンテンツのプレゼン資料の改善に向けた指導をすることにしました。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>一通りプレゼンの説明をしてもらったけれど、自分ではどのあたりがうまくいっていると思う？</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>今回の研修では「人としての器」をテーマにしました。<br>一般的なマネジメント研修では知識・スキル中心で、即効性のあるツールやフレームワークを学ぶものが中心ですが、「人としての器」をテーマとしたものはほとんど見られません。<br>今回の研修を通して、時間をかけてじっくりと「器」という観点から自分自身を振り返ることになり、それは受講者にとっても貴重な機会になると思います。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>この研修を行うと、顧客からはどういった反応があると思う？</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>まずは器という概念を理解して、それから自身の器の成長についてグループで対話を通じて、自分がどういった器をつくろうかという理想の状態を描くことになります。その後、そのためのアクションプランをつくるので、受講者も前向きに成長に向けた一歩を踏み出すことが期待されます。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>本当に、こちら側が意図したとおりにうまく行くかな？</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>それは受講者の研修に臨む態度や置かれた文脈にもよるかもしれませんが、この研修は1日という制約の中で、できるだけ多くの受講者が自分にとっての「器」に目を向けられるように、対話時間をしっかりと取ったり、内省のツールとしてのワークシートを用意するなどの工夫をしました。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>それって、つまり、参加者が内省する力があるかどうかにかかっているということ？<br>もしそうだとしたら、プログラムの設計として少し弱すぎないかな？<br>調査研究グループではそういった仕事のクオリティでも許されたかもしれないけれど、この仕事はお客さんからお金をもらってやるものだからさ。<br>受講者がどう感じるかに関しては、こちら側の想定どおりに行くとは限らないから、できるだけ響かなそうな人をイメージしながらプログラムをつくったほうがいいよ。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>たしかに、そうですが、響かなそうな人をターゲットとした場合は、コンテンツ全体のレベルもそういう人に合わせることになるので、逆にメインターゲットの満足度が下がってしまいかねないと思います。<br>響かなそうな人は、今回の集合研修のターゲットとせずに、別の個人面談などがある研修コンテンツなどで受け皿を用意したほうが良いのではと考えています。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>それはそうなんだけど、俺が言っているのは、この研修で期待される効果がいまいちはっきりしていないってことなのよ。<br>本当にこの研修を通じて、顧客に最大の効果は発揮されると思うの？<br>そもそも君が想定している効果って何？<br>その効果を最大にするための工夫が、現状では内省任せになっていて、プログラムの完成度としては不十分なんじゃないの？<br>やみくもに反論したり言い訳したりする前に、相手が何を考えて伝えようとしているのかを深堀りして尋ねたほうがいいよ。<br>その真意をきちんと理解しないまま会話していると、顧客に対しても質の高いプレゼンテーションはできないからさ。<br>明日までに、もう一度、提案資料は考え直してもってきてください。</p>
</blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">この時、部下XはマネージャーAの言葉をただ受け入れる様子で、それ以上の返答をすることができませんでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、この指導の翌日以降、部下Xは会社を欠席するようになり、その後、メンタルヘルス不調で仕事を長期休職する運びになりました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下Xをリーダー候補として期待して指導をしたつもりだったのですが、「なんだか最近の若者は打たれ弱すぎて困るな&#8230;」と溜息をつきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（以上、ケース終わり）</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph">上記のケースをご覧いただいて、どのように感じたでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAの発言内容は説得力があり、仕事のクオリティをあげるうえで非常に重要な観点が含まれていたようにも思えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、この指導を引き金にして、部下Xがメンタルを崩してしまったことは明らかと言えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">みなさんは、上記のケースにおいて、マネージャーAの姿勢にどのような課題があったと思われますでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">ここで読み進めるのを止めて、一度、ご自身で考えてみていただけますと幸いです。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph">***</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、クリティカルシンキング（批判的思考）に長けており、いくつかの問いを投げかけて部下Xの自律的な思考を引き出そうとしています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そのことは、「自分ではどのあたりがうまくいっていると思う？」「本当に、こちらがら意図したとおりにうまく行くかな？」「プログラムのつくりとして少し弱すぎないかな？」「本当にこの研修を通じて、顧客に最大の効果は発揮されると思うの？」「そもそも君が想定している効果って何？」「プログラムの完成度としては不十分なんじゃないの？」という質問に象徴されます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、こうした問いは、マネージャーAがこれまで身につけたフレームワークが活かされているものの、どこか表面をかすめるだけで核心をついていない印象もあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、結果として、部下Xが他者依存的になり、上司（マネージャーA）に言われたことばかりをやるようになり、淡々と仕事もこなす感じに見受けられる現状を引き出しているようにも思えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">こうなってしまったのは、なぜでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">一つには、マネージャーAが投げかける問いが、自分なりの正解を想定していて、その正解を当てられない部下Xは能力がない人間であると思わせるやりとりになっていることが考えられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは部下Xの可能性を引き出すというよりも、むしろ部下Xの可能性を狭めていると言えるのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以前、<a href="https://h-utsuwa.com/outline/sashisuseso">ビジネスにおける「さしすせそ」の病</a>という記事の中で、「最善策」「証拠」「スキル」「説明性」「即効性」を求めすぎることの弊害について触れました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは不確実性を減らし、成功確率を上げるために、繰り返し批判的な投げかけを行っていますが、それによって見失っているものが多くあることに気づけていません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、マネージャーAが仕事のクオリティばかりに気をとられて、部下X自身のことをきちんと見ようとしていないと言い換えることもできます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下Xがどのような想いで新しい研修コンテンツを持ってきたかを、どれほど深く理解しようと努めていたと言えるでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">残念ながら、マネージャーAは部下Xの想いに関して汲み取ろうとする共感的な投げかけは、ほとんどありませんでした。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、マネージャーAは、クリティカルシンキング（批判的思考）には長けていますが、コンストラクティブシンキング（建設的思考）を十分に身につけられているとは言えません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下指導の場面では、批判的なコメントだけでなく、「○○をしてみたらもっと良くなると思うよ」「私が責任を取るから○○にもチャレンジしてみたら？」と建設的に発展させるような姿勢も重要となります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーAは批判的なコメントを投げかけることに終始し、結果として自分のほうが正解をわかっている優位な立場であると思わせることに成功しているかもしれませんが、部下のほうから恐れずに提案ができるような対等な関係づくりには失敗していると考えられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そのような中で、徐々に部下が委縮し、上司の顔色を伺ってばかりで、自分の意見も率直に言えなくなり、そして、やがてメンタルを疲弊して休職に至ってしまったのも当然の結果と言えるのではないでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">まとめ</h6>



<p class="wp-block-paragraph">以前の記事、<a href="https://h-utsuwa.com/outline/evaluation">「人としての器」の評価をどう考えるか？</a>の中でも述べましたが、私たちが世界をどのように捉えるかに関しては、実証主義・解釈主義・批判的実在論といったパラダイムがあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">その中でも、特に現代社会で根強いのは実証主義のパラダイムと言えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これは、一言で言えば、誰が見ても同一の結論となるように客観的に事象を捉えるという思想の下で、普遍的な真理を追い求め、その真理が成り立つ条件を事細かに規定しようという立場です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それゆえに、世界をクローズドシステム（閉鎖空間）と見なして、ある刺激を与えれば画一的な反応が出る機械のように動くものと捉える傾向に陥ることがあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、社会科学に代表されるような人間社会の現実は、複雑なオープンシステム（開放空間）であり、様々な不確実性に満ちているという前提を持っています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAのように「本当に、こちら側が意図したとおりにうまく行くかな？」という問いは、実証主義のような普遍的な真理が成り立つことを念頭にしていると考えられるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もしオープンシステムであるという前提が共有できていたのならば、そもそも「意図したとおりに成功させる」ことは不可能だと理解したうえで、もう少し違った質問の仕方になるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">例えば、「こちら側が意図したとおりにうまく行かない可能性もある。もう少し、顧客に寄り添った形で研修効果を高めることはできないかな？」という質問の仕方であれば、不確実性を前提とした認識が共有されることになります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">些細な違いのように見えるかもしれませんが、もともとのパラダイムが異なるがゆえに質問の仕方にも微妙なニュアンスの違いが表れており、それが結果としては、相手の主体性を引き出すかどうかに関わる大きな違いを生じさせるのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">これに対して、マネージャーAの場合は、クローズドシステムを前提としているため、真実を目指してできるだけ不確実性を排除するために、事細かに内容を詰めるような指導をしていくことになるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは一方で、現実の複雑さのダイナミズムや、長期的な視野や、目に見えない可能性を見落とすことになるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして何より、部下Xがどのように自主性を発揮する形で変容をしていくか、その結果として、もしかしたら上司であるマネージャーAが見えている以上にコンテンツ自体が発展していくかもしれない可能性を狭めることにもなります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">このように、私たちが自分の置かれたパラダイムに束縛されているときこそ、「人としての器」の在り方に意識を向けることが重要と言えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」という四領域の観点から自分の器を省みることできれば、自分の価値基準にとらわれて相手を説得したり、相手の意見に耳を傾けようとしないという過ちを防ぐことができます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこで、あなたがマネージャーAになりきったつもりで、以下の問いを考えてみてください。</p>



<ul class="wp-block-list">
<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「感情」を抱いていますか？　感情豊かにポジティブなフィードバックができているでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「他者への態度」で接していますか？　真剣に相手の話や想いに耳を傾けようとしているでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「自我統合」の過程にありますか？　自身の信念やありたい姿も真摯にさらけ出して伝えているでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「世界の認知」を持っていますか？　広い視野から様々な可能性を検討しようとしているでしょうか？</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph">こうした実践を積むことで、少しずつ相手の想いを汲み取りながら、相手の自主性を促すような指導やフィードバックができるようになるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">先日、「仏様の指」というお話を聴くことがあり、あらためて部下指導の心得について考えさせられました。</p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph">「仏様がある時、道ばたに立っていらっしゃると、一人の男が荷物をいっぱいに積んだ車を引いて通りかかった。<br>そこはたいへんなぬかるみであった。<br>車は、そのぬかるみにはまってしまって、男は懸命に引くけれども、車は動こうともしない。<br>男は汗びっしょりになって苦しんでいる。<br>いつまでたっても、どうしても車は抜けない。<br>その時、仏様は、しばらく男のようすを見ていらっしゃいましたが、ちょっと指でその車におふれになった、その瞬間、車はすっとぬかるみから抜けて、からからと引いていってしまった」</p>



<p class="wp-block-paragraph">「これがほんとうの一級の教師だ。男はみ仏の指の力にあずかったことを永遠に知らない。自分が努力して、ついに引き得たという自信と喜びで、その車を引いていったのだ」</p>
<cite>大村はま『教えるということ』より</cite></blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">仏様の指の力が強すぎたら、その男は仏様の指に気づいて、仏様に感謝して終わったかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">逆に、仏様の指の力が弱すぎたら、男はいつまでもぬかるみから出られず、これからずっと自信を失っていたかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーの役割として重要なのは、仏様のようにさりげなく、部下の成長に向けて背中を押すことではないでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」を学び実践することは、そのような姿勢で他者と向き合うことに他なりません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAが、部下に自らのビジョンを描かせ、積極的に提案をさせ、率先して周りを巻き込む姿勢を持たせられないかと課題意識を持っていること自体は素晴らしいことです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、そのような部下育成の想いを持っているにもかかわらず、どういうわけか部下が自律的にならずに閉塞感が漂っているのだとしたら、マネージャー自身が、一度、スキルやテクニックといった形式知化できるものばかりを獲得する姿勢から離れる必要があります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そうしたときこそ、正解のない不確実で曖昧な「人としての器」という概念に目を向けるべきタイミングと言えるのかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>
]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>ケース：自分よりも優秀な部下を持つマネージャーAの器</title>
		<link>https://h-utsuwa.com/case/manager-a2</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[hanyu]]></dc:creator>
		<pubDate>Sat, 23 Sep 2023 05:12:29 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[ケース]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://h-utsuwa.com/?p=937</guid>

					<description><![CDATA[「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。 以下、自分よりも優秀な部下を持つマネージャーAのふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。 ケース：自分 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」に関する実践的な理解を深めるためのケースを作成しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以下、自分よりも優秀な部下を持つマネージャーAのふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。</p>



<h6 class="wp-block-heading"><span id="toc1">ケース：自分よりも優秀な部下を持つマネージャーAのふるまい</span></h6>



<p class="wp-block-paragraph">【状況】</p>



<p class="wp-block-paragraph">ある企業においてマネージャーAは、3人の部下を持っています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">30代前半の部下Xは非常に優秀で、これまで様々なプロジェクトをリードし、いずれも成果を出してきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">周囲はXの能力に関しては高く評価しており、X自身もどんなプロジェクトであっても成果につなげるという強い自信を持っているようです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーAは、部下Xが時に意見を強く主張するがゆえに一部の社員との間で対立が生じており、また上司である自分に意見を求めずに意思決定をすることもあるため、部下Xに協調性が欠けていると感じています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、これまでの10年のキャリアにおいて、商品開発→事業推進→新規事業立ち上げ→経営企画→人事など組織の前線から裏方まで一連の仕事を担当してきました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ただし、頻繁に仕事を変えていることから、その都度の上司との衝突が原因で異動につながっているのではないかと、マネージャーAは推測しています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこで、同じチームメンバーである部下Yに対して、部下Xについてどう思うかを、尋ねてみると次のように返答がありました。</p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下Y：</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、たしかに仕事ができて、これまで様々な経験をしているので頼りになりますし、彼の判断は信頼できます。<br>ただ、普段接している中では、私たち同僚に対して「考えが浅い」「情熱が足りない」と感じているのだろうなという一面も垣間見えます。<br>また（マネージャーAも含む）管理職に対しては、「マネジメント能力が低い」「部下の成果を横取りする」「仕事内容に見合わないほど報酬が高い」と批判的に捉えているコメントを聞いたことがあります。</p>
</blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">これを聞いたマネージャーAは、やはり部下Xが協調性が欠け、独りよがりで傲慢になっているように感じました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこで、マネージャーAは、部下Xと1on1面談の時間をつくり、彼に「協調性が足りない」という点を伝えて、改善に向けた指導をすることにしました。</p>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">これまで君が優れた成果を出していることにはとても感謝している。<br>でも、もう一段高いレベルで仕事をしていくためにも、これからは、もっと協調性を持つことが必要だと思うんだ。<br>実際、周囲のメンバーの間で対立が起きているようだし、君の言動によって辛い思いをしているという声もあがっている。<br>どれほど論理的に正しくて、実効性のある優れた提案ができたとしても、もっと謙虚になって、周りに対して配慮する姿勢を持つことができないと、この組織の中ではやっていけないよ。</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">たしかに、私が求めている仕事の水準が高いために、周りに辛い想いをさせているところもあるかもしれません。<br>でも組織をよりよくしたいという想いを持って、自分でも必死に勉強をして、いくつもの新しい提案をして、成果にもつなげています。<br>私が理想とする仕事の水準を周りのレベルに合わせて下げるべきだ、とおっしゃりたいということでしょうか？</p>
</blockquote>



<blockquote class="wp-block-quote is-layout-flow wp-block-quote-is-layout-flow">
<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">いや、高い水準で仕事をしてもらっていることには、とても感謝しているんだ。<br>ただ、君の進め方に周りがついていけないので、もっと相手の立場を考えて発言してほしいと思っている。<br>実際、この前のプロジェクトでも、私に一度も相談することなしに勝手に進めただろう？<br>そういう姿勢で、周りへの配慮が欠けたまま仕事を進められると、組織としてもバラバラになってしまうんだよ。</p>
</blockquote>



<p class="wp-block-paragraph">この時、部下Xは渋々マネージャーAの言葉を受け入れる様子でした。<br>しかし、この面談の1週間後、部下Xは辞表を出して会社を退職することになりました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（以上、ケース終わり）</p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph">上記のケースをご覧いただいて、どのように感じたでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAの発言内容は理にかなっており、組織を一体化させていくうえで合理的なふるまいであったようにも見えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、この面談を引き金にして、部下Xが退職してしまったことは明らかと言えます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">みなさんは、上記のケースにおいて、マネージャーAの姿勢にどのような課題があったと思われますでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">ここで読み進めるのを止めて、一度、ご自身で考えてみていただけますと幸いです。<br></p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph">***</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xの想いは「組織をよりよくしたいという想いを持って、自分でも必死に勉強をして、いくつもの新しい提案をして、成果にもつなげています」という部分に集約されています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーAはこの点について、部下Xがどのような想いを持って仕事に取り組んでいるのかを詳しく掘り下げようとせず、部下Xの心の内側には耳を傾けようとしません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">その反面、マネージャーAは、部下Xに協調性が欠けていると思っており、部下Xを改善に向けて説得することにとらわれています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、「君の言動によって辛い思いをしているという声があがっている」「君の進め方に周りもついていけない」「周りへの配慮が欠けたまま仕事を進められると、組織としてもバラバラになってしまう」といった表現から垣間見られます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、マネージャーAは、部下Xの想いに寄り添うよりも、「周囲」という数の力を振りかざして、いかに自分の考えをわからせるかに注力をしているのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">言い換えれば、マネージャーAは、対話を通じて、自分の主張を批判的に反省しようという姿勢が見られません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、「私に相談することなしに勝手に進めた」という論理を持ち出している部分からは、マネージャーAが部下Xを自分の管理下に置きたいという意識もうかがえます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Yとのやり取りの中で「マネジメント能力が低い」「部下の成果を横取りする」「仕事内容に見合わないほど報酬が高い」という発言を聞いたマネージャーAは、自分よりも優秀な部下Xが、自分を差し置いて成果を上げることに、恐れを感じているのかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、自分の立場を脅かされないためにも、部下Xの行動を制約することで組織のバランスを保とうとしているのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">この部分にこそ、マネージャーAの器の限界が投影されています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もしかしたら、マネージャーAは部下Xの退職の理由を、彼の協調性の欠如や組織への適応不足にあると考えているかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xはたしかに、突出した能力を発揮しており、ある意味、組織を乱すようなユニークさがあり、周囲ともうまく馴染めない異分子と言えるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーの役割として重要なのは、そうした異分子となりうるメンバーを、いかに広い器で包み込み、その個性を組織の力に活かしていけるかどうかではないでしょうか。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<h6 class="wp-block-heading"><span id="toc2">まとめ</span></h6>



<p class="wp-block-paragraph">私たちは、人間関係構築において、同質性や安定性を求めたがる傾向もあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、組織の規律や秩序を保つために、管理的なロジックを持ち出して、異質な個性や可能性を制約するためのマネジメントを志向してしまう気持ちもわかります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、そうした姿勢の良し悪しについては、一度、立ち止まって、人としての器という観点から考えてみる必要があるのではないでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">組織（あるいは自分自身）の安定を脅かすような、異質な他者と直面したときこそ、「人としての器」の在り方に意識を向けることが重要です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」という四領域の観点から自分の器を省みることできれば、自分の価値基準にとらわれて相手を説得したり、相手の意見に耳を傾けようとしないという過ちを防ぐことができます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そこで、あなたがマネージャーAになりきったつもりで、以下の問いを考えてみてください。</p>



<ul class="wp-block-list">
<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「感情」を抱いていますか？　冷静に動じずにいられるでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「他者への態度」で接していますか？　真剣に相手の話に耳を傾けようとしているでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「自我統合」の過程にありますか？　社会性を含んだ自身の信念やありたい姿を意識した状態にいるでしょうか？</li>



<li>部下Xと接するとき、あなたはどのような「世界の認知」を持っていますか？　広い視野から様々な可能性を検討しようとしているでしょうか？</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph">こうした実践を積むことで、少しずつ「異なる視点を与えてくれてありがとう」「私の考えを広げてくれてありがとう」といったように、立場の異なる相手への感謝の気持ちを持てるようになるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、部下Xを主語にして話を聴いてみることで、もっと深く部下Xのことを知ることができたかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、これまでどのような想いで仕事をしてきたのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、周囲とどんな関係性を築きたかったのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、組織に対してどのようなサポートを望んでいたのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは、人生を通じて、どのような人間になろうと思っていたのでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">ところが、不本意に退職をしてしまった後では、そうした理解によって深くつながれたであろう未来の可能性も閉ざされてしまいます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">十分なコミュニケーションを取れずにすれ違ったまま、誰かを恨んだり憎んだりしたまま関係が終わるのは、とても悲しいことです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」を学び実践することは、異なる背景を持つ他者にも耳を傾け、理解しようとする姿勢を持つことに他なりません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、もしかしたら交わることもなかったかもしれない未来の可能性を優しく包み込むように、手を伸ばしていく姿勢と言い換えることもできるように思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>
]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
		<item>
		<title>ケース：評価面談におけるマネージャーAの器</title>
		<link>https://h-utsuwa.com/case/manager-a</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[hanyu]]></dc:creator>
		<pubDate>Sun, 25 Jun 2023 14:35:53 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[ケース]]></category>
		<guid isPermaLink="false">https://h-utsuwa.com/?p=651</guid>

					<description><![CDATA[「人としての器」について、実践的な理解を深めていくためのケースを作成しました。 以下のマネージャーAの評価面談におけるふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。 ケース：評価面談 [&#8230;]]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[
<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」について、実践的な理解を深めていくためのケースを作成しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以下のマネージャーAの評価面談におけるふるまいをみながら、「人としての器」という観点で、何が課題なのかを考えてみましょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<h6 class="wp-block-heading">ケース：評価面談におけるマネージャーAのふるまい</h6>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>【状況】</strong></p>



<p class="wp-block-paragraph">ある企業においてマネージャーAは、3人の部下を持っています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">通期（1年間）の評価面談の時期、部下Xが提出した本人評価を見ると、6つのプロセス評価のカテゴリのうち、Sが3つ、Aが3つという結果になっていました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xはたしかに優秀で、今期は他のメンバーが思いつかないような新しい提案を積極的に行い、組織の活性化や利益に貢献しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、人件費の問題と部内のメンバー間での評価にあまり差を付けたくないと考えたマネージャーAは、Xが提出した本人評価をすべて1段階下げて、Aを3つ、Bを3つとして最終評定を返しました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">すると、部下Xから、なぜ最終評定が下がったのか明確に説明してくださいと指摘を受けました。</p>



<p class="wp-block-paragraph">以下、フィードバック面談の場面におけるマネージャーAと部下Xのやりとりを見ていきます。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity is-style-default"/>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>本部長と話して総合的に判断した結果、最終評定でこうなったのは、点数を押し上げるような特別なものがなかったというのが理由なんだよね。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>Sを取るには、どのような基準があるのですか？</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>それは、それぞれの項目によって基準は違うんだけど。。。今回は、要するに、押し上げる要素がなかったという話なんだよ。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>その押し上げる要素を知りたいんです。そこがわからないと、何をやったらSになるのかがわからないままなので。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>君の言うことも、わかるんだけどね。でも、やはり「これはというものがなかった」ということなんだよね。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>その「これはというものがなかった」という認識にバイアスがあったという可能性はないですか？</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>それはさ、普段から折に触れて話もしているし、君の働きぶりもつぶさに見ているから、私の認識が誤りだったということはないと思うよ。<br>それに、私の判断が間違っている、間違っていないということを言い出すと、この話は終わらなくなるじゃんか。<br>だから、その点は、どうか理解してほしいな。<br>もちろん、君の要望に100％応えられているとは私も思っていないよ。<br>君が評価を受ける立場で、いくらか納得できないというのもよくわかる。<br>だけど、どんな評価制度でも完全なものはないからさ。<br>それを言い出すと本当にキリがなくなるんだよね。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>制度上で、完全なものがないという点は、私もわかっています。<br>だから、制度にはある程度、ゆとりをもたせていて、現場の運用者の判断で決められる余地を残しているものと理解しています。<br>だからこそ、マネージャーが部下に納得感の得られるような回答をしないと、次年度のアクションやモチベーションにも影響していくのではないでしょうか？　<br>それなのに、「これはというものがなかった」「それを言い出したらキリがない」と言って、この話を切り上げてしまうのはどうなのでしょう。。。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>私は、もう、それしか方法がないと思っている。<br>だって、評定Sは「これはすごいね」とならないとつかないものだから。<br>それについて、基準を明確にしてと言われても正直難しい。<br>まあ、例えば、君が管理職全員を巻き込んで、社内も業績も劇的に変わったら、私も「それはすごい」「これはSに値する」という話になると思うよ。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>そういう結果に表れているものは業績評価の対象ではないでしょうか？　今回はプロセス評価の話をしているのですが。。。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>いやいや、プロセス評価だとしても、そういう結果が見えないと、判断がつかないんだよね。<br>だって、本当に管理職を巻き込んで、彼らが動き出したら、「すごいね」と思ってもらえるじゃん。<br>だから、それくらいのことをすれば疑いようもなくSがつくということなんだよ。<br>君がいくらプロセスや行動で、そういった気持ちでやっていたとしても、それが結果として出てこなければ評価できないんだよ。</p>



<p class="wp-block-paragraph">あと、もう一つ、ついでに言っておくと、今期の行動が本当に安定して発揮できるものなのかどうかをもう少し見てみたいというのもあるんだよね。<br>今回、一回やりましたというだけでは、「本当に安定して発揮できるの？」となるからさ。<br>Sのレベルっていうのは、そういう疑問すらも生まれないわけ。<br>だから、結果が安定しているなって思われるくらいにやってもらわないとSは難しいかな。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>部下X：</strong><br>その安定というのはどれくらいのスパンを想定しているのですか？</p>



<p class="wp-block-paragraph"><strong>マネージャーA：</strong><br>いやいや、評価のスパンは1年間だからね。<br>Sの場合は、明らかにみんなが「すごい、すごい」となるから、こんなふうに安定性に関して疑問を抱かれることもない。<br>そして、Sなら、そもそもこんなふうに評価結果で揉めることもないはずだから。</p>



<p class="wp-block-paragraph">（以上、ケース終わり）</p>



<hr class="wp-block-separator has-alpha-channel-opacity"/>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph">上記のケースをご覧いただいて、どのように感じたでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">他者を評価するということは、きわめて難しいものです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">私たちが日々仕事をしている文脈は非常に複雑で、多様な関係者とのインタラクションが存在し、そして長い期間に及ぶ取り組みがあります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それをたった5段階の評価ラベルで単純化すること自体が、前提として問題をはらんでいるとも言えるでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">みなさんは、上記のケースにおいて、マネージャーAの姿勢にどのような課題があったと思われたでしょうか？</p>



<p class="wp-block-paragraph">ここで読み進めるのを止めて、一度、ご自身で考えてみていただけますと幸いです。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br>***<br><br></p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">部下Xは自己評価と上司からの評価にギャップがある理由、S評価とA評価の差異、そしてS評価の基準について知りたがっています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーAはこれらについて明確な説明を行おうとはしません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、マネージャーAは部下Xを納得させるために、自分の世界の中で成立している論理を持ち出します。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは、「これはというものがなかった」「普段からコミュニケーションを取り、君の行動を詳細に観察している」「Sのレベルは、安定性に関する疑問すらも生まれない」といった表現から垣間見られます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">つまり、すべての基準は（それが明確でないとしても）マネージャーA自身の中にあるのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">しかし、マネージャーAは、その基準に関して、あるいは彼の主張に関して批判的に反省することはありません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">彼の話は自己完結であり、相手が自分の考えを理解しているかどうかすらも振り返ろうとしません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">言い換えれば、彼は聞き手の立場を真剣に考えようとしていないのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下Xのどのような行動を見て、それをどのような理由で評価の根拠としたか、自分自身でもはっきりと理解していないのでしょう。</p>



<p class="wp-block-paragraph">彼はS評価とA評価の違いを明確に区別できておらず、それらの評価が持つより深くて複雑な意味合いに気づかないまま自分の論理を展開しようとしているのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">さらに、マネージャーAは自身の経験から培ってきた方法論で相手を説き伏せようとしています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「結果が見えないと判断できない」という彼の言葉は、彼が目に見える結果に依存する傾向を表しています。</p>



<p class="wp-block-paragraph">このとき、彼にとっては「プロセス評価」という概念が何を意味するのかをあらためて検討するまでもなく、自身にとって都合が良いように概念をゆがめながら用いているのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、彼自身の経験則が必ずしも通用しない場合や、自身の意図通りに物事が運ばない時には、「なぜ私の言うことが理解できないんだ」という不快感を抱きながら、少なからず感情的になっている可能性も見受けられます。</p>



<p class="wp-block-paragraph">マネージャーAは、部下Xの言葉の背景を深く聞こうとせず、ほとんどの会話で否定的に返答し、どうにか自分の考えが正しいことをわからせようと必死なのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">もし、このようなマネージャーの下で、彼の自己完結な態度がまかり通るような状況が続いたとしたら、いずれ組織のメンバーは誰もマネージャーAのやり方に疑問を呈することもできない事態に陥ってしまうかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<h6 class="wp-block-heading">まとめ</h6>



<p class="wp-block-paragraph">私たちの周りにはマネージャーAのような人は少なくありませんし、知らず知らずのうちに自分自身がマネージャーAのようになっているかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">今回のケースのように、認識の違いによる対立が発生したときこそ、「人としての器」の在り方に意識を向けることが重要です。</p>



<p class="wp-block-paragraph">初めはなかなか難しいかもしれませんが、「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」という<a href="https://h-utsuwa.com/outline/components" target="_blank">四領域の観点</a>から自分の器を省みることできるようになると、自分の世界が正しいという発想で相手を説得したり、相手の意見をむやみに否定したりすることも少なくなります。</p>



<p class="wp-block-paragraph">ぜひ、あなたがマネージャーAになりきったつもりで以下の問いを考えてみてください。</p>



<ul class="wp-block-list">
<li>このとき、あなたはどのような「感情」を抱いていますか？　冷静に動じずにいられるでしょうか？</li>



<li>このとき、あなたはどのような「他者への態度」で接していますか？　真剣に相手の話に耳を傾けようとしているでしょうか？</li>



<li>このとき、あなたはどのような「自我統合」の過程にありますか？　社会性を含んだ自身の信念やありたい姿を意識した状態にいるでしょうか？</li>



<li>このとき、あなたはどのような「世界の認知」を持っていますか？　広い視野から様々な可能性を検討しようとしているでしょうか？</li>
</ul>



<p class="wp-block-paragraph">こうした実践を積むことで、少しずつ「異なる視点を与えてくれてありがとう」「私の考えを広げてくれてありがとう」といったように、立場の異なる相手への感謝の気持ちを持てるようになるかもしれません。</p>



<p class="wp-block-paragraph">大前提として心に留めておきたいのは、私たちはすべてを完全に理解できていないし、自分にはまだまだ知らない部分がたくさんあるということです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">それは立場が親であっても、年上であっても、先輩であっても、上司であっても、先生であっても、学歴が高くても、社長であっても共通して言えることです。</p>



<p class="wp-block-paragraph">そして、これこそが<a href="https://h-utsuwa.com/outline/etymology" target="_blank">「うつ（空）」の思想</a>をベースにした、人としての器の考え方の根幹ではないかと思います。</p>



<p class="wp-block-paragraph">「人としての器」を学び、実践するということは、これまでの自分では見えていなかった可能性を優しく包み込んでいく姿勢で、対立するような他者の考えにも耳を傾けて、理解しようと努めることなのです。</p>



<p class="wp-block-paragraph"><br></p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>
]]></content:encoded>
					
		
		
			</item>
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