ゆのみんと仲間たちー第36話「異国での経験」

第36話「異国での経験」

乾いた風が、港町の市場の通りを斜めに駆け抜けていった。

陽射しは強いが、その光はどこか自由で、軽やかだった。

つぎっぴーは荷台を押しながら、きょろきょろと周りを見回していた。

「すごいなぁ……どこ見ても、新しい景色ばっかりだ!」

金継ぎの線が太陽光に反射して、きらりと輝いた。

ここは、つぎっぴーが働く海外の陶器市場。

色鮮やかな器や布、香辛料の匂い、様々な言語と笑い声が入り混じり、日々、世界中から人が集まる。

◆新しい仲間、新しい文化

「Tsugi! Over here!」(ツギ!こっち手伝って!)

市場の店主マルタが呼ぶと、つぎっぴーは元気に駆け寄った。

「はーい!いま行くよー!」

器の梱包や陳列、運搬。覚えることは多く、動き回る毎日。

なのに、つぎっぴーはどれも『楽しさ』の方が勝っていた。

「You learn fast!」(覚えるの早いね!)

「えへへ……ありがとう!」

褒められると、金継ぎの線が少し誇らしげに光った。

わぁ……こんなにぼくのこと、褒めてくれるんだ……。

嬉しさと、新しい風が胸に入ってきた。

◆『欠けてること』は、ここでは魅力だった

ある昼下がり。

観光客の女性が、つぎっぴーの器を手に取った。

「This one is beautiful… look at this golden line!」(この金の線、とても綺麗……!)

マルタが説明した。

「It’s called Kintsugi. Broken, but more beautiful.」(これは『金継ぎ』という技法でね。欠けたからこそ、美しくなる)

女性は目を輝かせた。

「Wonderful philosophy. I’ll take it!」(なんて素敵な哲学……これにします!)

つぎっぴーの胸が熱くなった。

欠けたぼくの器が……『きれい』って言われた……?

胸の金線がぽっと温かくなり、日差しに照らされて柔らかく光った。

「Thank you!!」(ありがとう!!)

つぎっぴーは深くお辞儀した。

その瞬間、市場の風がくるりとつぎっぴーの体を包んだ。

……ぼく、ここでやっていけるかも……!

◆『とりあえずやってみよう!』の真価

夕暮れ、市場の片付けをしながらマルタが言った。

「Tsugi, tomorrow you try the stall alone. Let’s see your style.」(ツギ、明日は一人で店番をしてみろ。お前の『売り方』を見てみたい)

「えっ……ぼく、一人で!?」

驚きと不安と……そして興奮。

つぎっぴーは胸に手を置き、金線の温度を感じながら言った。

「……うん!とりあえずやってみる!」

マルタは満足そうに頷いた。

「That’s the spirit.」(それでいいんだ)

つぎっぴーは夜空を見上げた。

欠けた茶碗の縁に、星が反射していた。

ぼくの『欠け』は、ここでは『光る』んだ……

その光は、これから訪れる大きな試練を覆い隠してくれるほど眩しかった。


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