ゆのみんと仲間たちー第2話「初めてのひび」

第2話「初めてのひび」

朝霧が窯の屋根にまとわりついていた。

昨日、同じ火で生まれた三つの器――ゆのみん、つぼるん、つぎっぴー ――は、初めての朝日を見ていた。

「わあ、光ってる。あたたかいね」

ゆのみんが湯気をのぼらせると、隣のつぼるんは静かにそれを見つめて言った。

「光って、土の中から出てきた火みたいだな……」

そのすぐ横で、茶碗のつぎっぴーが笑う。

「ぼく、ちょっと欠けちゃってるけど、気にしないもん!」

――そのときだった。

つぎっぴーの縁に、小さな『青いひび』が走った。

それはまるで、心の奥に冷たい風が入り込んだみたいだった。

「だ、だめだよ……こんなじゃ、もうお茶なんて入れられない!」

泣きそうになるつぎっぴーを見て、ゆのみんがそっと近づき、ふわりと湯気をまとわせる。

「まぁまぁ、まずは一息いれよっか」

ゆのみんの湯気は、やさしくヒビの上をなでていく。

でも、痛みは消えなかった。

「これはな……焦らんでもええ」

背後から陶じいの声がした。

白い手ぬぐいの隙間から覗く目が、静かに微笑んでいた。

「ヒビはのう、『心が広がる音』じゃ。狭い器には、ようけの温もりは入らんのじゃ」

陶じいは、金粉を少しだけ指先にとり、欠けた部分にそっとなじませた。

火の粉がひとつ、空へ跳ねる。

するとヒビは青から金へと変わり、やわらかく輝きはじめた。

「これ……ぼくの中、光ってる」

「そうじゃ。おまえの痛みが、誰かを照らす光になるんじゃ」

つぎっぴーは、ゆのみんと顔を見合わせた。

ゆのみんの湯気に反射して、金の線が虹のように光った。

そのとき、つぼるんが静かに言った。

「それって……痛みの中に『意味』があるってこと?」

陶じいは土をこねながら頷いた。

「意味も、光も、ヒビから染み出すんじゃ」

その日から、つぎっぴーの胸の中には、小さな光が消えずに灯り続けることになった。

後にそれが、『再生の記憶』と呼ばれることになるなんて、まだ誰も知らなかった。


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