第4話「火をわけあう」
山の朝は冷たかった。
霜の降りた地面を、三つの小さな器が「ぽてぽて」と歩いていく。
まだ火を入れてもらったばかりの彼らは、土の冷たさに少し震えていた。
「ねぇ、なんか今日、空気がつめたくない?」
ゆのみんがそう言って、体の中に少しだけお湯を入れた。
ふわりと湯気がのぼり、三人の間にあたたかい空気が生まれる。
「うわぁ、いいねそれ!」
つぎっぴーが笑いながら手を伸ばす。
「……湯気って、見えないのに、感じるんだね」
つぼるんが静かに呟いた。
ゆのみんは、ほんの少しだけ照れたように笑う。
「まぁまぁ、まずは一息いれよっか」
三人は小さな輪をつくって座り、湯気の真ん中に顔を寄せた。
それはまるで、世界が一瞬やさしく止まったような静けさだった。
そのとき、陶じいの声が背後から届く。
「ええのう……『あたたかさ』はのう、ひとり分やない。寄り添うとき、器どうしが少しずつ火をわけあうんじゃ」
「火をわけあう……?」つぼるんが首をかしげると、陶じいはうなずいた。
「心の火もな、独りで燃やすと風に消える。けど三つ集まれば、炉になるんじゃ」
「ろ……?」
「炉(ろ)は、『ひとの間』のことじゃよ」陶じいはそう言って、笑い皺を深くした。
湯気が輪の形をつくり、空へゆらめきながらのぼっていく。
その輪の中で、つぎっぴーがぽつりと呟いた。
「ねぇ、これ、消えちゃうのかな?」
「ううん」ゆのみんが言う。
「消えても、あたたかさは残るよ」
その言葉を聞いた瞬間、つぼるんの内側で『ことばの芽』がかすかに揺れた。
(消えることと、残ること。それって、同じなのかな……?)
彼の胸の奥で、新しい問いが静かに芽を伸ばしていた。
やがて、湯気の輪は薄くなり、空へと溶けていった。
けれど、その日から〈ひとがま〉の陶房の空気には、いつもほんのりと、あたたかい香りが漂うようになった。