第9話「転ぶたびに光る」
丘の上の小道は、朝露でぬれていた。
陽が差すと、草のひとつひとつが金色に光る。
その間を、つぎっぴーが駆けていた。
「見ててねーっ! こんどは転ばないから!」
ゆのみんは湯気をふわりとのばして見守り、つぼるんは眉をひそめて呟いた。
「……『転ばない』って、転ぶことを前提にしてない?」
「いいのいいの! とりあえずやってみよう!」
つぎっぴーは笑って、坂道を勢いよく駆け下りた。
が、ガタンッ――!
乾いた音。草の上を転がり、またひびの部分がかすかに鳴いた。
「だいじょうぶ!?」
ゆのみんが駆け寄り、湯気をかける。
つぎっぴーは、頭をかかえて笑った。
「うん……またやっちゃった。でも、痛いってことは、生きてるってことだよね」
つぼるんが小さくうなずく。
「……その発想は新しいな」
三人が笑いあったそのとき、森の方から、かすかな風が吹いた。
――『答えを求めすぎて焦るとヒビが入る』
つぎっぴーが目を丸くする。
「また……聞こえた」
ゆのみんは静かに答えた。
「ううん、これは『森の声』じゃなくて、きっと、わたしたちの中の『思い出す声』だよ」
つぎっぴーはしばらく空を見つめた。
それからゆっくり立ち上がった。
「焦らない。でも、止まらない。ヒビが入っても、また金でつなげばいい。だから――もう一回、やってみよう」
つぼるんが微笑んだ。
「なるほど、『何度転んでも立ちあがれる』ってことか」
「なにそれ、かっこいい!」
つぎっぴーはまた走り出した。
坂道を転がるたびに、金の線が光る。
その光は、まるで太陽の反射のように丘を照らしていた。
丘の上で見ていた陶じいが、静かに呟いた。
「よかよか。土の子らは、転ばんと光らん」
ゆのみんが湯気でその言葉を包み、つぼるんが小さく記憶に刻んだ。
「土の子らは、転ばんと光らん……」
やがて夕陽が沈み、丘はオレンジ色に染まった。
つぎっぴーは息を切らしながら笑った。
「ねぇ、ぼく、転んだ数だけ光る気がする!」
「それ、いいね」
ゆのみんが微笑み、湯気が金の線と混ざりあう。
つぼるんが頷いた。
「転ぶたびに光る。――それ、ぼくらの『成長の音』かもしれない」
丘に残った三人の影が、夕陽の中でひとつの輪のように重なった。