第16話「同じ場所、違う影」
夕暮れの〈ひとがま〉の陶房で、三人は同じ土間に座っていた。
同じ時間、同じ空気、同じ夕陽。
けれど、三人が見ている世界はまるで違っていた。
ゆのみんは、光の筋の中で湯気をゆっくり立ちのぼらせながら考えていた。
(今日は……ふたりとちゃんと話せるかな?)
(でも、また何か変な気まずさが出たら……どうしよう。)
胸の奥で、湯気がちりちりと痛んだ。
つぎっぴーは、陶房の入り口に向かってぽつんと座っていた。
(みんな、ここにいるのに……なんで『楽しいはずの時間』が楽しく感じないんだろう。)
いつもなら「とりあえずやってみよう!」と叫んで走り回るのに、ここ数日は金の線が静かだった。
つぼるんは、窓際に置かれた土のかけらを見つめながら、ひとり黙っていた。
(どう言葉をかけたらいいんだろう……。)
(傷つけたくない。でも、また考えすぎてしまう気がする。)
手の中の黒土が、やけに重かった。
三人は、同じ土間にいたのに、まるで別々の部屋にいるかのようだった。
沈黙が長く続き、夕陽の影がじわじわと伸びていく。
影は三つ。
でも、その影は重なろうとしない。
そんなとき、陶じいが窯から顔を出した。
「おまえさんたち……影が、いつもより細いのう」
三人は一斉に視線を落とした。
陶じいは続ける。
「影ってのは、自分が『立ってる場所』を映すもんじゃ。同じ場所にいても、心の場所が違えば、影の形も違う」
ゆのみんが思わずつぶやいた。
「……見てる景色が違うの、わかる気がする」
つぎっぴーが、小さな声で言った。
「ぼく……気がつけば、外ばっかり見てた。ふたりのほうを見るのが、ちょっとこわかった」
つぼるんは、胸の奥がきゅっとなった。
「ぼくも……心のほうばかり見ていた。ふたりをどう扱えばいいのか、わからなくて」
ゆのみんが、そっと湯気を広げた。
「わたしは……ふたりの顔を見すぎて、自分の景色が見えなくなってた」
三人はしばらく黙っていた。
でも、その沈黙はさっきまでの『冷たい沈黙』ではなく、どこか柔らかい『すきま』のようだった。
夕陽の影がゆっくり滲んでいき、三つの影が土間の真ん中で少し重なった。
ほんの少しだけ。
ほんとうに少しだけ。
けれど、その重なりは確かだった。
ゆのみんが微笑んだ。
「……ねぇ、まずは『いっしょに』夕陽、見よっか」
つぎっぴーが頷いた。
「うん……今日だけは、走らないでおく」
つぼるんは静かな声で言った。
「今日だけは、言葉を探さなくてもいい気がする」
三人は並んで夕陽を見た。
同じ夕陽。同じ時間。
景色の見え方はまだ違う。
心の『場所』もまだバラバラ。
けれど、その違いを抱えたまま、同じ方向を向いている三人がいた。
土間に流れる風は、どこかほんのりあたたかかった。