ぐるぐるチャートのご使用について

総論

私たちが開発した器のぐるぐるチャートですが、「自分たちもやってみたい」という声をいただくことが多々あります。

また、人づてにマネしてやっている人がいるという声を聞くこともあり、徐々に認知度が広がっていると感じます。

私たちとしましては、ぐるぐるチャートが広まって、器という考えを深めていただけるのは嬉しく思います。

個人的には、ライフラインチャートよりも簡便にでき、また他者との対話を前提としていることから相互理解も進むので、ぐるぐるチャートは非常に使い勝手も良く効果的なツールだと実感しています。

さらに最近ではキャリアトークという形で、閉じられたカウンセリング面談よりもオープンに、かつ創発的にキャリアを語る機会が求められていると聞きます。

そのため、ぐるぐるチャートを通じた、新しいキャリア支援の形や組織開発の方法論が、企業の文脈でもますます発展していくことが期待されます。

ただし、現状のぐるぐるチャートの運用は私たち研究チームで作り上げてきたもので、やや属人化されている点は否めません。

効果をより高めるために、さらなる探究が必要になりますが、現時点で私たちが考えているぐるぐるチャートにおけるファシリテートの心得についてまとめます。


1.器の構成要素、器の成長プロセスを意識して問いかける

ぐるぐるチャートを用いた”いれものがたり”を行う際には、「器を語る場である」というセッティングが重要となります。

器の構成要素は「感情」「他者への態度」「自我統合」「世界の認知」の四象限から捉えられます。

そして、器の成長プロセスには<A:蓄積><R:認識><C:構想><T:変容>というサイクルがあります。

ぐるぐるチャートを用いながら、幼少期から現在に至るまで、ARCTプロセスをどのように回してきたかを深めることが重要です。

話し手は自分の器をありのままに語ることで自分を知り、聴き手は相手の器を真剣に聴くことによって相手を知る機会になります。

これを通じて、自分と相手の器の違いを確かめ合い、自身の器づくりの参考にするとともに、相互のつながりや学びを促すことが目的となります。

そのため、話をする・話を聴くという対話のプロセスこそが、器づくりの一環であるという認識を持つことが大切になります。

単に自分の聞きたいことを聴く、言いたいことを言うという場ではなく、あくまで器の構成要素、成長プロセスを意識した関わりが求められます。

2.相手という存在に興味を持ち、相手の心の動きを共感的に追体験する

相手という存在に興味を持つことも大切です。

自分にとって興味のある「話」に耳を傾けるのではなく、相手という「存在」に興味を持ちます。

平たく言えば、相手が自分にとって大切な人と想定して、相手への愛情をもって耳を傾けます。

それができると、次第に相手の物語の中に入り込み、相手の心の動きを共感的に追体験することになります。

物語の中で、相手がどのような気持ちなのか、どのような状況に置かれているのかを、心でしっかりと感じ取り、その感情に深く入り込むことが大切です。

3.相手の文脈や背景を理解したうえで、相手が気づいていない意味を見出す

相手の語る出来事の文脈や背景を俯瞰的に理解し、相手にとっての重要な意味を見出す姿勢も大切です。

当然ですが、聴き手は相手のことをすべて知っているわけではありません。

しかし、実は話し手も自分で話しておきながら、自分のことを完全にわかっているわけではないのです。

その際には、むしろ、聴き手のほうが、物語を初めて聴いた側の視点から、素朴な疑問や違和感を問いかけることができます。

素人目線で掘り下げながら、場面設定を具体化していき、背後にある複雑な要因を多角的に整理して、相手が気づいていない意味を見出す姿勢が大切です。

4.相手の話を通じて気づいた、相手の器の「らしさ」をポジティブに伝える

相手の話を通じて気づいた、相手の器の「らしさ」をポジティブに伝えましょう。

自分らしさは、意外と自分ではよくわからないもので、他者から言葉をかけてもらうことで初めて理解できることがあります。

また、自分では良くない部分と思っているところが、実は「らしさ」であり、良い面として見れることもあります。

他者からポジティブに指摘してもらうことで、自分の受け入れがたい面も「らしさ」として受け入れられるようになります。

相手の大切にしている価値観を肯定する意味でも、他者から見えた相手の「らしさ」をポジティブに伝えると良いでしょう。

5.相手の話を聞いた”私”の視点から、相手の興味や好奇心を広げる提案を行う

一人ひとりの器は違って当たり前です。

対話においては、その違いを通じて、相互に学ぶことに意義があります。

そこで、相手を全面的に受容するだけでなく、”私”という視点から、相手の「らしさ」を広げるメッセージを投げかけることも大切です。

聴き手は話し手の伴奏者であるという姿勢で、相手の興味や好奇心を広げるように、例えば、相手が躊躇していた領域に一歩踏み出そうと思うようなチャレンジングな提案を行ってみるのも良いのではないかと思います。

6.私自身の経験もオープンに話して、相手の課題や問題意識にお役に立とうとする

ファシリテーターは基本的には聞き役に徹しますが、時には自身の経験もオープンに伝えて、相手の課題や問題意識にお役に立とうとすることも大切です。

ただし、「○○理論によると…」と知識や一般論を展開するのではなく、あくまで自身の経験を伝えることが大切です。

また、聴き手が自説にすり替えながら批評やマウントをしてしまえば、相手中心の物語から離れていくことになりますので、自分の経験を聞いてほしいという意識にならないように、相手のお役に立とうとする意識が重要になります。

相手と自分では価値観や志向性が違って当然ですので、「あくまで私だったら」という前置きの下で、具体的な解決策を提示するというよりも、自分のチャレンジ経験を参考程度に伝え、相手の心に火が灯るかどうかを見極めるように対話を重ねていく姿勢が大切ではないかと思います。

7.これから何をしたいかというビジョンやアクションなど具体的な展開も語る

ありのままに話をする際、過去のつらい経験を勇気をもって開示いただくこともあります。

話し手は、自分の話なんて面白くない、変に思われたらどうしようという不安を抱えていることもあります。

一連の話を聞いて、無理にポジティブな方向に持っていこうとすると、語り手にとっての本心とギャップが生じ、その場を取り繕うような結論で終わってしまうこともあります。

しかし、その場しのぎに言葉を紡いで、見たくないものから目をそらしたままでは、器づくりは上手くいきません。

ですので、これから何をしたいかというビジョンやアクションを語るのは、しっかりと対話が深まり、語り手の自己受容も十分にできてからになります。

そのタイミングを見極めながら、あくまで中立的に、そして他人の目を気にせずに大そうなことは言わなくてもいいという前提の下で、あくまで本人にとって大切にしたい具体的な展開を問いかけていくと良いかと思います。

8.話をしてくれた相手に対して、学んだことと共に、感謝の気持ちを伝える

一連の話を聞いた最後に、聴き手が何を学んだのかを共有しましょう。

一人ひとりの器に違いがあり、どんな相手からも学びがあるはずです。

仮に相手に嫌な気持ちを抱くところがあり、自分との違いを受け止めきれなかったとしても、むしろ、それは自分の器を大きくするうえでの学びのきっかけであると言えるかもしれません。

したがって、どのような経験からも学びを見出す姿勢が大切です。

そして、話をしてくれた相手に、心からの感謝の気持ちを伝えましょう。

自分のことを開示してくれた相手がいなければ、この場は成り立たなかったという意識の下で、この貴重な機会に立ち会えたことに対する感謝の気持ちを伝えましょう。


まとめ

ここ数年、いれものがたりという対話の場をつくってきましたが、ぐるぐるチャートはシンプルで、とてもパワフルなツールだと感じます。

企業領域でのキャリアトークや組織開発、社会人の学びを促進する実践コミュニティ、自治体での地域活性化や教育活動、大学でのキャリア教育やコミュニケーションスキル開発など、ぜひ多くの立場の方に、ぐるぐるチャートを用いた対話を実践していただければと思います。

試しに、ぐるぐるチャートを体験したい方は、まずは、”金曜の夜はいれものがたり“にご参加ください。

そのうえで、ぐるぐるチャートの活用・実践したいという方は、下記のフォームから申請のうえ、ダウンロードしてご使用いただければと思います。

ぐるぐるチャート使用申請フォーム
ぐるぐるチャートをご使用する場合、こちらから申請してください。 フォームの回答後に、ぐるぐるチャートのダウンロードURLが表示されます。

ぐるぐるチャートを用いた研修やワークショップのご依頼に関しても承りますので、お気軽にご相談くださいますと幸いです。

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